新会社法のポイント.2
株式会社は本来、資本を集めるために株式の自由な譲渡を認めています。
しかし個人事業に近いような少人数で構成されている株式会社の場合は、株式の譲渡により会社に無関係な者が株主になると不都合なこともあります。
そのため従来の商法では、定款に株式の譲渡にあたって取締役会の承認を要する旨を規定することができました。
新しい会社法においては、この承認機関の範囲が広がり、取締役会のない会社では、株主総会の承認を要する旨を規定できることになりました。それ以外にも、定款に定めることにより代表取締役など他の機関の承認を必要とすることも可能です。
このような、定款において全ての株式の譲渡に対して会社の承認が必要とする制限を設けている会社を「株式譲渡制限会社」と呼びます。
そして新しい会社法においては、この「株式譲渡制限会社」に限り様々なメリットを受ける事が出来ます。
以下、その代表的なメリットを掲げていきます
1、取締役会を置かなくてもいい
従来の商法においては、株式会社は取締役3名以上、監査役1名以上という最低でも4名の役員(取締役会、監査役の2つの機関)の設置が必要でした。しかし改正後はこれらの取締役会、監査役という機関は必ずしも設置しなくてもよしとされました。
取締役1名+株主総会というシンプルな機関構成にすることが可能となったのです。
従来であれば、人数を揃えるために全く業務に携わらない人を名前だけ役員にしておくという例も数多くありましたが、そのような事をする必要がなくなりました。
ただし注意点として、株式に譲渡制限がついていない会社「公開会社」においては取締役会の設置が必要です。
つまり取締役1名で株式会社を構成する場合には、必ず「譲渡制限会社」であることが条件となります。
2、役員の任期が10年まで延長できる
従来の商法においては取締役の任期は2年を超えることができませんでした。
従って、同じ人が取締役を続ける場合にも2年に一度重任の登記をする必要がありました。
少人数の中小企業においては、ほぼ同じ人が役員を何十年も続けることが多く、2年ごとにこの手続きを繰り返していくことは手間暇や費用の面において非常に煩雑であるという問題がありました。
新会社法においては「株式譲渡制限会社」については、取締役の任期を定款に記載することにより最長で10年まで延長できるようになりました。
3、取締役の資格を制限することができる
旧商法においては定款によっても取締役の資格を株主に限定することは出来ませんでした。
しかし新会社法においては、「株式譲渡制限会社」の場合は、定款で定めることにより取締役を株主に限定することが可能となりました。
4、相続人等に対する売渡請求が可能になった
従来の商法では、「株式譲渡制限会社」であったとしても、相続や合併等の事由による株式の移転を制限することができず、そのため会社経営上、不都合な人が株主になることを阻止することができませんでした。
そこで新会社法では、定款で定めることにより、相続・合併等で株式を取得した新株主に対し、移転した譲渡制限株式について売渡請求をすることが可能となりました。
これにより不都合な人に株式が移転しにくくなり、会社の経営を安定させることができるようになります。
5、株主総会の招集手続きが簡略化
従来の商法では、株主総会の招集は原則2週間前までに書面またはメールによる通知が必要とされ、譲渡制限会社のみこの期限を1週間まで短縮することが可能でした。
新しい会社法においては、株式譲渡制限会社であればこの期限が原則1週間前とされました。
また取締役会が設置されていない株式譲渡制限会社の場合は、定款で1週間前よりも短縮できる上、書面などによらず電話・口頭で招集することも可能になりました。